比較級の基本用法
2つのものを比べて、両者の間に差があることを表す場合、形容詞・副詞の比較級を用いる。例えば、He is taller than me. は「彼は私よりも背が高い」といった意味を表す(形容詞 tall が比較級の形になっている。)。このとき、than は(原級比較の2つ目の as と同様)接続詞であり、後ろには本来節がくるが、述語以降が省略されている。than の直後に人称代名詞を置く場合、本来人称代名詞は主格になるはずだが、実際には上記の例文のように目的格になることが多い(この場合の than は前置詞と解釈できる。)。ただし、述語相当語句を省略しない場合は人称代名詞は主格となる(例:He is taller than I am.)。
比較級を用いた文は「~より…だ」という意味になるが、否定語が付くと「~より…ということはない」という意味を表す。例えば、He is taller than me. は身長に関して he > me ということを表しているが、He is not taller than me. では he ≤ me ということを表している。
比較級の修飾
比較級の前に much,far,a lot,even,still などを置くことで両者の差が大きいことを強調することができる。逆に、差が小さいことを強調する場合は、比較級の前に a little,a bit などを置く。
また、比較級の前に three years,five feet など具体的な数字を置くことで両者の差を具体的に表すことができる。
比較級を用いた諸表現
the 比較級
- the 比較級 of the two「2つのうち~な方」
2つのうち1つを限定して指す。対象が3つ以上の場合は最上級を用いる。of the two が文頭に出る場合もある。
- (all) the 比較級「ますます~だ」
後に for,because など理由を表す語句を伴い、「~なのでますます…だ」という意味を表す。否定形は none the 比較級 で、「~だからといって少しも…でない」という意味になる。
- the 比較級 S V,the 比較級 S V「~すればするほど…だ」
ラテン比較級
比較の意味を含む形容詞や動詞のうち、ラテン語由来のものは比較対象の前に than ではなく to を用いる。なお、ここでの to の品詞は前置詞であり、直後には名詞(句)を置き、その名詞の格は目的格となる。
ラテン比較級の例
熟語 意味
be superior to ~より優れた
be inferior to ~より劣った
be senior to ~より年上
be junior to ~より年下
be preferable to ~より好ましい
prefer A to B BよりもAを好む
prior to ~より前に
posterior to ~より後に
絶対比較級
具体的な比較対象をもたず、漠然と程度の高低を表す比較級を絶対比較級という。
絶対比較級の例
- the upper[lower] class「上流[下流]階級」
- higher education「高等教育」
- the higher[lower] animal「高等[下等]動物」
- the younger[older] generation「若年[高齢]世代」
no 比較級
- no 比較級 than A「Aと同程度しか~でない」
上述したように、否定文(not)の比較文では「主語 ≤ 比較対象」であることを表すが、not が no になった比較文では「主語≒比較対象」であることを表す。概して、no を伴う比較級の文は比較対象との間に差がないということを強調する。
- no more A than B「Bと同様にAでない」
than 以下に明らかに「Aでない」事柄を述べ、主語もまた同様に「Aでない」ということを表す。この構文では主語と比較対象の両方を否定しているが、more が less に置き換わった文では「Bと同様にAである」と両方を肯定する文になる。
なお、A is no more B than C is D.「AがBでないのはCがDでないのと同じだ」=「CがDでないのと同様にAはBでない」という表現(所謂クジラ構文)はこの構文の一種である。
- no more than 数詞「~しかない」
only ~ や as little as ~ と同義。また、not more than 数詞 で「多くとも~」という意味を表す(≒at most)。
more が less になるとニュアンスが逆になり、no less than 数詞 で「~もある」(≒as many[much] as)、not less than 数詞 で「少なくとも~」(≒at least)という意味を表す。
その他の比較級
- 比較級 and 比較級「ますます~」
〈more 原級〉 の形をとる比較級の場合、more and more 原級 という形になる。否定形は less and less 原級。
- more B than A「AというよりはむしろB」
rather B than A と同義。AとBに名詞が入る場合は more と B の間に of が入る。
- much[still] more ~「まして~はなおさらだ」
肯定文で用いられる。否定文の場合は much[still] less ~ の形を用いる。
- more or less「多かれ少なかれ」
- sooner or later「遅かれ早かれ」
- know better than to do「~するほど愚かではない」