主語の人称や数に限定されず、常に原形で用いられる語のことを不定詞(infinitive)という。不定詞には、単体で用いられる原形不定詞と直前にto を伴う to不定詞がある。
原形不定詞
原形不定詞は、(ought,used を除く)法助動詞の直後に置かれる述語動詞や第五文型の目的格補語として用いられる。
第五文型においては原形不定詞は述語動詞が使役動詞(make,have,let)・知覚動詞(hear,think,find など)である場合に用いられる。述語動詞が help の場合は原形不定詞・to不定詞のどちらも用いることができる。(参考:第4文型・第5文型)
to不定詞
直前に前置詞 to を伴う不定詞のことをto不定詞という。to不定詞は文中に於いて名詞、形容詞、副詞として用いられる。
不定詞の三用法
名詞的用法
to不定詞が主語・補語・目的語の働きを担っている場合、to不定詞が名詞として働いているとみなすことができる。
不定詞が主語になる場合、形式主語の it が通常用いられる。例えば、To do V X. というような文構造の文では、It V X to do. というように主語が it に置き換えられ、不定詞部分が外置される。
第5文型の目的語に不定詞が用いられる場合も同様に形式目的語の it が通常用いられる。具体的には S V to do C. という構造の文が S V it C to do. という語順になる。
形容詞的用法
to不定詞が名詞を後置修飾している場合、to不定詞が形容詞として働いているとみなすことができる。
被修飾語である名詞が不定詞の主語や目的語の働きをする場合がある。不定詞が他動詞で目的語を伴っている場合、名詞は不定詞の主語として働いている。同様に、不定詞が他動詞で目的語を伴っていない場合、名詞は不定詞の目的語として働いている。また、不定詞が自動詞で不定詞の直後に置かれている前置詞に目的語が欠けている場合、名詞は前置詞の目的語として働いている。
また、不定詞が名詞の内容を説明している(同格関係にある)場合がある。不定詞を目的語にとる動詞や不定詞を伴う形容詞が名詞化したもの(例:decide to do →decision to do)との間に同格関係がよく認められる。
副詞的用法
to不定詞が名詞以外を後置修飾している場合、to不定詞が副詞として働いているとみなすことができる。
副詞的用法の不定詞は〈目的〉〈結果〉〈感情の原因〉〈判断の根拠〉などの意味を表す。
独立不定詞・代不定詞
独立不定詞
成句的に用いられる不定詞を含んだ表現のことを独立不定詞という。
独立不定詞の例
成句 | 意味 |
---|---|
to be brief | 要するに |
to be frank | 率直に言って |
to be honest | 正直に言って |
to be sure | 確かに |
to begin with | まず始めに |
to make matters worse | さらに悪いことに |
to say nothing of | 言うまでもなく |
to say the least | 控えめに言っても |
to tell the truth | 実を言うと |
needless to say | 言うまでもなく |
not to say | とは言わないまでも |
so to speak | いわば |
strange to say | 奇妙なことに |
代不定詞
一度述べられた不定詞を含む表現に再び言及する場合、反復を避けるために to だけを残してそれ以降を省略することがあり、この用法を代不定詞という。ただし、to の直後に置かれているのが be や助動詞 have の場合は to be、to have まで残す。
分離不定詞
不定詞を修飾する副詞を置く場合、副詞の位置についての厳密な規則は存在しない。ただし、副詞が不定詞を修飾していることを明示したい場合には to の直後に副詞を置くことがあり、この用法を分離不定詞という。不定詞の相・態
不定詞に進行相を用いる場合、to be doing の形を用いる。同様に、不定詞に完了相を用いる場合は to have done の形を、完了進行相の場合は to have been doing の形を用いる。完了相を伴った不定詞のことを完了不定詞という。完了不定詞では述語動詞よりも一つ前の時点を示す。
受動態を不定詞で表す場合、to be done の形を用いる。進行相を伴う受動態の場合は to be being done、完了相を伴う受動態の場合は to have been done、完了進行相を伴う受動態の場合は to have been being done となる。
不定詞の慣用表現
tough構文
〈S is Adj to do〉の形で主語に対する話し手の評価を表す。欠落している不定詞あるいは前置詞の目的語の位置には主語が補われる。形容詞に easy,hard,impossible,tough などの難易を表す語が用いられるため、一般に総称して tough構文と呼ばれる。
Adj ~ to構文
- too Adj[Adv] to do
- 「…すぎて~できない」という意味を表す。不定詞の意味上の主語は不定詞の直前に置かれる。
- Adj[Adv]enough to do
- 「~するのに十分…」という意味を表す。不定詞の意味上の主語は不定詞の直前に置かれる。また、〈so Adj[Adv] as to do 〉や〈so Adj[Adv] that S V ~〉で同様の意味を表すことができる。
be Adj to do
表現 | 意味 |
---|---|
be able to | ~できる |
be about to | まさに~するところ |
be anxious to | ~したがる |
be apt to | ~する傾向がある |
be bound to | ~する義務がある |
be due to | ~の予定である |
be eager to | ~したがる |
be likely to | ~しそうになる |
be ready to | ~する準備ができている |
be reluctant to | ~したがらない |
be unable to | ~できない |
be willing to | ~するのを厭わない |