動詞の時制と相

動詞の時制

時間軸上のある一点を基準として、動作が行われる時間の前後関係を示す規則のことを時制(tense)という。英語に於いて、時制には現在と過去の2つが存在し、動詞(助動詞)の活用によって示される。

現在時制

時間軸上に於いて、現在時点で行われる動作(状態)には現在時制が用いられる。現在時制では動詞の活用は原形または三人称単数現在形をとる。

現在時制は以下の4つの意味を表す際に用いられる。

  1. 現在の動作・状態
  2. 現在の習慣的な動作
  3. 不変の真理、ことわざ
  4. 未来の動作・状態

1.について、多くの動作動詞では現在の動作を表すのに進行相を伴う必要がある。よって相を伴わずに現在時制単体で用いられている場合は専ら2.以降の意味を表している。

2.について、時間的な現在とは関係なく習慣的に行われる動作を表す際にも現在時制が用いられる。例えば He gets up early. という文は現在のことではなく日常的に早起きしているという意味を示唆している。また、この用法では usually など頻度を表す副詞がしばしば挿入される。

3.について、The sun rises in the east. などのように時間に依って変化することのないような法則やことわざには現在時制が用いられる。2.の用法とは時間的な意味を含んでいないという点で共通している。

4.について、既に決定している予定(確定した未来)などを表す場合には現在形単体で用いられ、そうでない未来を表す場合には法助動詞 will などを伴う。will を用いる場合、時制の変化を受ける部分は will であり、本動詞の形は法助動詞の制約を受けて原形になる。

未来時制

現在より後の時点で行われる動作(状態)には動詞(原形不定詞)の前に will,shall,be going to などがしばしば置かれる。形態論ではこの用法は現在時制だとみなされる(will,shall,be のいずれも現在形であるため、英語では未来のことを表す際に動詞の屈折が生じない)が、意味上の観点からしばしば未来時制だとみなされている。

未来を表す用法は本人の意思の有無により単純未来と意志未来の2つに分けられる。肯定文で意志未来を表すとき、will が用いられるのは主語が一人称の場合に限られる。

過去時制

時間軸上に於いて、現在より前の時点で行われた動作(状態)には過去時制が用いられる。

過去時制は以下の3つの意味を表す際に用いられる。

  1. 過去の動作・状態
  2. 過去の習慣
  3. 歴史的事実

1.について、過去時制では現在時制で進行相を伴う必要のある動詞についても動詞単体で用いることができる。

2.について、過去の習慣を表す際には would や used to がよく伴われる。どちらも法助動詞であるため、その語自身は時制の制約を受けて過去形となり、直後には原形不定詞が続く。

3.について、歴史的事実を表す場合には常に過去形で表される。

大過去

複数の節からなる文に於いて、過去に起きた出来事よりもさらに前の出来事を表す際にはしばしば大過去が用いられる。大過去は had done の形で表され、過去完了形と同一の形をとる。

動詞の相

時間軸上のある一点において、動作がどのように進行しているのかを示す規則のことを(aspect)という。時制と組み合わせて用いられる相には進行相と完了相の2つがあり、第一助動詞であるbe,have によって表される。

進行相

動作が継続的に行われていることを表す際には進行相が用いられる。

進行相は be doing の形をとる。時制による変化は be が受け、現在時制ならばam/are/is、過去時制ならば was/were、直後は常に現在分詞となる。ただし、法助動詞を伴う場合は法助動詞が時制による変化を受け、be は原形となる(例:will be doing)。

進行相は以下の5つの意味を表す際に用いられる。

  1. ある瞬間に進行中の動作
  2. ある期間に進行中の動作
  3. 習慣的な動作
  4. 近い未来の動作
  5. 同時に起きた2つの動作

3.について、進行相を伴わない場合ではその習慣について客観的に述べるに留まるが、進行相を伴う場合には話し手の主観的な評価が加わる。例えば He is always sleeping. という文では「彼はいつも寝てばかりいる」というように非難めいたニュアンスが含まれている。

5.について、主節と従属節の両方に進行相を用いることで2つの動作が同時に起きたということを表す。

完了相

動作や状態が基準時点に於いて完了していることを表す際には完了相が用いられる。

完了相は have done の形をとる。時制による変化は have が受け、現在時制ならばhave/has、過去時制ならば had、直後は常に過去分詞となる。ただし、法助動詞を伴う場合は法助動詞が時制による変化を受け、have は原形となる(例:will have done)。

完了相と時制について、動作・状態が完了した時点の時制が適用される。具体的には動作・状態が過去の時点で完了している(=現在まで継続していない)場合は過去完了、現在まで継続している場合は現在完了、未来のある時点まで継続している場合は未来完了(現在完了の have の直前に will/shall を置く)が用いられる。

完了相は以下の3つの意味を表す際に用いられる。

  1. 動作・状態の継続
  2. 動作・状態の経験
  3. 動作の完了

1.について、「ずっと~だ(だった)」という意味を表し、since,for などをよく伴う。

2.について、「~したことがある(あった)」という意味を表し、before ,ever,once,often などの時や頻度、回数を表す副詞をしばしば伴う。

3.について、「~してしまった(ていた)」という意味を表し、already,yet,just などの副詞をしばしば伴う。

完了進行相

完了相のうち、継続用法に於いて述語が動作動詞である場合には完了進行相が好んで使用される。

完了進行相は have been doing の形をとる。時制による変化は have が受け、現在時制ならばhave/has、過去時制ならば had、be は常に過去分詞、述語動詞は常に現在分詞となる。ただし、法助動詞を伴う場合は法助動詞が時制による変化を受け、have は原形となる(例:will have been doing)。

動詞の活用と相について、以下の表のようにまとめられる。will,shall などの法助動詞を伴う場合は、頭に法助動詞を置いて直後の語を原形にする。

-進行相完了相進行完了相
現在時制do/doesam/are/is doinghave/has donehave/has been doing
過去時制didwas/were doinghad donehad been doing