生物の多様性と共通性

生物の多様性

現在、地球上には名前が付けられているだけで約190万種、未知の種を含めると数千万種もの生物が生活している。それぞれの生物には外形的、機序的な多様性が見られる。

生物はその特徴から、真核生物・真正細菌・古細菌の3つに分類される(3ドメイン説、ウーズ(1990))。真核生物はさらに、動物・植物・真菌・原生生物に大別される(六界説、ウーズ(1977))。生物同士の類縁関係を系統といい、系統を表す図のことを系統樹という。

生物の共通性

生物の基本的特徴

生物には多様性だけでなく、様々な共通性もみられる。多くの生物にみられる普遍的な特徴として、以下の4つが挙げられる。

一つ目に、すべての生物のからだは細胞からできている。からだが一つの細胞でできている生物を単細胞生物、からだが多数の細胞でできている生物を多細胞生物という。

二つ目に、すべての生物はATPを媒介としてエネルギーの出入り行う。植物は光合成によって光エネルギーを化学エネルギーに変換し、有機物を合成する。また、動物は食事によって有機物を体内に取り込み、呼吸によってエネルギーを取り出す。

三つ目に、すべての生物は、生物の形質を決定する遺伝情報をもつ。遺伝情報は細胞の中に存在し、細胞分裂によって複製される。

四つ目に、多細胞生物は、体内の細胞が安定した活動を行えるように体内環境の維持を行う。

ウイルスは遺伝情報をもつが細胞をからだの構成単位としていない。また、細胞のように自己増殖もできず、エネルギーの出入りもない。このように、ウイルスは生物の特徴を一部のみ持った半生物的存在と位置付けられている。

細胞の基本構造

真核細胞

細胞内に存在する、特定の機能を持った構造体のことを細胞小器官(オルガネラ)という。真核細胞は染色体などからなるを一つ持つ。細胞の核以外の部分を細胞質という。細胞質には、呼吸によってエネルギーを取り出すはたらきをもつミトコンドリアや、光合成を行う葉緑体、有機物や無機塩類などを含む細胞液で満たされている液胞、それらの細胞小器官を除いた液状成分である細胞質基質(サイトゾル)などがある。

すべての細胞は厚さ5~10nmの細胞膜に包まれている。また、植物細胞や真菌細胞は細胞膜の外側に細胞壁をもつ。植物細胞の細胞壁はセルロースやペクチン、真菌細胞の細胞壁はグルコースやキチンを主成分とする。

真核細胞の構造はおおむね共通しているが、動物・植物・真菌で異なる部分もある。まず、葉緑体は植物細胞にのみ存在する。そのため動物や真菌は光合成を行うことができない。また、動物細胞には細胞壁が存在しない。さらに、液胞は植物細胞や真菌細胞で特に発達している。動物細胞では電子顕微鏡を用いることで液胞を観察することができる。

原核細胞

原核細胞は細胞小器官をほとんど持たず、細胞壁、細胞膜、鞭毛、核膜に覆われていないDNAなどで構成される。原核生物は葉緑体をもたないが、ユレモやネンジュモなどに代表されるシアノバクテリアのように光合成をおこなうものもある。

各細胞の比較

 原核細胞動物細胞植物細胞真菌細胞
DNA
×
細胞膜
細胞壁×
ミトコンドリア×
葉緑体×××
液胞×
細胞質基質

+plus

様々な細胞小器官

上記以外にも、細胞内には様々な細胞小器官が存在する。例えば、タンパク質の合成や輸送などを行う小胞体や、糖鎖の修飾などを行うゴルジ体、動物細胞にのみ存在し細胞分裂時の紡錘体形成に関与する中心体、小胞体の表面や細胞質中に存在しタンパク質の合成を行うリボソーム、細胞内の不要物質を消化するリソソーム、過酸化水素の代謝などを行うペルオキシソーム、細胞内に取り込まれた物質の輸送や代謝に関与するエンドソームなどがある。これらの細胞小器官の多くは電子顕微鏡で観察することができる。